日本では、なたねは最も古い油の原料のひとつであり、社寺の燈明として多く使われていました
食用油としても精進料理に使われていましたが、一般にとても高価なものでした
江戸時代になり、なたねの栽培が推奨され、市民も燈明へ使えるようになり、幕末から明治にかけて食用油として少しずつ普及していきました
日本の食用油の生産量のうち、なたね油が半分以上を占めています
無味無臭のなたね油に慣れると、伝統製法で搾ったなたね油は衝撃的です
美しい黄金色、かすかに香ばしい風味が残り、濃厚な味わいがあります
摩擦熱による油の劣化も嫌い、昔ながらの玉締め圧搾法で本物のなたね油を製造しているのが、会津にある平出油屋さんです
平出油屋は江戸時代から続く伝統ある商家で、当初は雑穀の販売などを行っていました
3代目が明治時代に製油業を始め、油屋として4代目の現社長・平出祐一さんが切り盛りしています
なたね油が主ですが、戦後からはごま油の製造も手掛けています
25坪ほどの工場の中では、油搾りに必要な機械類は、全て昭和初めから中頃にかけて製造されたもの
油搾りのスタートは焙煎
カマドの上の大釜では黒い粒々のなたねが大きなプロペラにかき回され煎られます
蒔の火力は石油などに比べて弱いため時間がかかりますが、じんわり中まで熱が入るため搾った油も格別
種に水分が残るとよい油ができないため、30分ほど煎って水分をゼロにします
次の工程は、除塵
煎り終わったなたねは2枚の網を使いゴミが除かれます
つぎに圧偏機械に送られ、3つのローラーで潰されます
この時点でなたねを指で押してもサラサラ
潰されたなたねは濾し器に入れられ、下から蒸気を通される(蒸熱)ことで、固まっていた油が伸びます
指にとると、じんわりと油がにじみ出ます
水蒸気を通すだけのため熱せられても水分は残らず、床に広げて蒸気を飛ばす「息抜き」をすると水分はゼロに
次の工程が玉締め
円筒形の篩にフィルターの役をする分厚いマットを敷き、息抜きしたなたねを詰め、この上に裸足で乗り、しっかり踏み固めていきます
十分踏み固めた後、玉締り機械にセットすると、金属製の半球(玉締めの由来)が下りてきて、ゆっくりと圧力をかけていきます
タラタラと黄金色のなたね油が流れ出て、50分ほど圧をかけると、なたねに含まれる油分の90%ほどが搾れる
搾った油はタンクで沈殿させ、上澄みを筒状の手すき和紙に一つ一つ丁寧に注ぎ、自然に落ちるのにまかせ、ゆっくり濾過
高級和紙で時間をかけ精製された油が瓶詰されます
油の黄金色は、なたねに含まれる天然の酸化防止物質ビタミンEと天然の色素クロロフィルやカロテン
密度が濃く、酸化しにくく、熱に強い油です
大量生産される食用油の多くは、ヘキサンなどの溶剤を使い、原料の油分を100%抽出し、様々な薬剤による化学処理や高温処理をしているため、自然の成分が損なわれ、消泡剤や酸化防止剤も使用されているため、原料の質が悪くてもわからなくなっています
本物の油をご堪能ください!